
今回は前回の記事の続きです。
前回のおさらい
・滑舌と書くけど大事なのは舌だけではない
・「調音」の仕方をマスターすることが滑舌が良くなることへつながる
・よくある滑舌トレーニングは今すぐやめましょう!
でした。
詳しくは前回記事を読んでいただけると嬉しいです。
では、続きです。
よくある滑舌のトレーニング
「口を大きく開けて、はっきり言いましょう!」
「あ」の口は縦に指が3本入るくらい開けて……」
「早口言葉を口をしっかり動かして……」
これをやめましょうね、ってことなのですが、それはなぜか。
前回お伝えした、「言葉」というものがどうやって出来上がるか、つまり「調音」の仕組みを思い出していただければこのトレーニングが危険だということがわかります。
声帯でできた原音が、のどの部分(咽頭)や鼻、口の中のあらゆる場所にあたり、また、口の中だけでなく、顔の筋肉や唇の動きも合わさり、最終的に「あ」とか「さ」とかの言葉になります。
これです。
感のするどい方ならもうわかるはず!
何が言いたいかというと、今この記事を読んでいただいているあなた様と、例えば私は同じ人間だと思います。
しかし、同じ人間でも、まったく同じ骨格の人はおそらくいません。
具体的に言うと、「調音」をするための首から上の骨格、舌の長さ、歯並び、表情筋、唇筋の強さ、日常での使い方、その他諸々……
私とあなた様は違うんです。
そして長年の日常会話等で言葉を使ってきた際、その人独自の調音をやってきているわけです。
その結果、滑舌が悪い、明瞭に話せない、などが人によって起こります。
つまり、滑舌が悪いとひとくくりにすることはできますが、滑舌が悪い原因、改善方法は、人によって違います! ここが大事! 人によって違うんです!
「口を大きく開けて、はっきり言いましょう!」
「あ」の口は縦に指が3本入るくらい開けて……」
「早口言葉を口をしっかり動かして……」
人によって改善方法が違うのに、まとめて決まったトレーニングをやっていたんじゃあ、改善するものも改善しません。
ただ、滑舌が悪い原因のタイプはあります。
私の場合、最初にそのタイプを考え、トレーニング方法を考えていきます。
そのタイプの一例をあげると……
・表情筋、唇筋を普段からあまり動かさないため、調音が明瞭にならない「省エネタイプ」
・表情筋、唇筋、舌などを滑舌を良くしようと頑張って動かし、力みにより滑らかな調音ができない「頑張りすぎタイプ」
・「舌」の筋肉が弱いためうまく動かすことができず、調音が安定しない「舌弱タイプ」
・「息」のあてる位置が誤っていることにより調音が不明瞭にになる「誤息タイプ」
※~タイプっていうのは全部造語です。
一例をあげるだけでこんな感じ。人によってはもっとあります。そして、「省エネタイプ」+「舌弱タイプ」とか複合もします。
このタイプを踏まえて、考え、「頑張りすぎタイプ」が「口を大きくあけて」「ハッキリ!」ってトレーニングを繰り返したらどうなるでしょう。
もう言うまでもなく、負のスパイラル。
余談ですが、私が見てきた統計では、この「頑張り屋すぎタイプ」の人は、アナウンスの学校とか、声優養成所とかに通っており、プロを目指して頑張っている人に多い傾向があります。
聞くと、まさに頑張って口を開けようと教わるんだとか……。
……頑張って練習しているのに気づかずに悪化させられてしまうなんて、ひどい話ですよね……
ただ、「省エネタイプ」の人は表情筋などのトレーニングとして、口を大きく開けてみようとか、表情をオーバーに使ってみようというのはありです。それで調音がうまくいくこともあります。
つまりまとめると、
滑舌トレーニングとひとくくりにしても、その内容は人によって異なる。
間違ったトレーニングをやっていると良くならないばかりか悪化してしまう危険もある。
トレーニングをする場合は自分がどのタイプなのかを考えてから、自分にあったトレーニングをしましょう。
ということですね。
2回に渡って滑舌についてご紹介しました。
少しでも滑舌にお悩みの方の力になれたらうれしいです。
トレーニング方法等は、また別記事で書きますのでお楽しみに!