滑舌とは音を調整して言葉にすること
最初に滑舌とはなにかという部分をご説明します。
一言で滑舌とは何かと言えば。「音を調整して言葉にすること」です。人間の喉には「声帯」があり、この声帯に息を通し振動させることによって「音」になるわけですが、この段階ではまだ「言葉」にはなっていません。声帯でできたこの「原音」を言葉にするためには、顔の中のパーツをそれぞれ使って「音を調整する」必要があります。この作業を「調音」と呼びます。
この調音は、舌や歯、口や鼻の中の空間を繊細に使う事によってようやくできるものです。調音によって声帯でできた原音が調整され、言葉になるわけですから、この調音が上手くできれば「滑舌」は良くなります。
そのため、滑舌が悪い原因=調音が上手くいっていない状態と言い換えることができます。逆に言えば、調音を上手くやれれば、滑舌は良くなるということですね。
滑舌が悪くなってしまう原因は?
滑舌が悪くなってしまう原因は調音が上手くいっていないからですが、その調音が上手くいかない原因は、以下3つが上手く動いていない可能性が高いです。
舌
表情筋
息(ブレス)
舌の原因
滑舌とは「滑らかな舌」と書きます通り、舌の動きや舌のポジションが誤っている場合、滑舌は悪くなってしまいます。調音を行う上で、この舌の動き、ポジションは重要です。舌が原因になってしまう場合は、以下の内容が考えられます。
舌の筋肉が弱い
舌の筋肉が弱いことにより動きが悪くなってしまったり、喉の奥の方に流れてしまったりなど、滑舌においてのデメリットが起こります。
こんなチェックリストをご用意しましたので、よろしければご自身がどうかチェックしてみてください。
普段口呼吸をすることが多い
アレルギー性鼻炎・花粉症などがあり、鼻が詰まっていることが多い
睡眠時いびきをかいている
口を閉じている時舌が上あごについていない
このチェック項目の中で一つでも当てはまると、舌の筋肉が低下している可能性があります。
特に一番下の「口を閉じている時、舌が上あごについていない」というものは、筋肉が弱い状態で起こりやすい状態です。この項目に当てはまってしまった場合は、すでに舌の筋肉が弱い状態の可能性があります。舌のポジションとして、口を閉じているとき、上あご(上の前歯の裏あたり)に舌先が付いている状態が正常のポジションです。このポジションではなく、真ん中に浮いている、下あご(下の前歯の裏あたり)についている場合は、筋肉が弱くなってしまっている状態の可能性があります。
トレーニング方法
舌の筋肉を鍛える「舌の筋トレ」を行います。また、日常から舌のポジションを上あごに付けるよう心がけます。
舌の筋トレ方法の一例としては……
①舌を「べっ」と前に出します。あっかんべーをするような状態です。
②そのまま舌を上下に10回振りましょう
③次に左右に10回振りましょう
次に舌のポジションを上あごに付ける方法です。どうしても最初は違和感があると思いますが、舌先を上あごに付けることで鼻呼吸もしやすくなります。メリットが大きいので試してみてください。
①舌先を上の前歯の裏あたりに付けてみてください。
②そのまま吸うようにして、舌を上あごの方に「軽く吸いつけます」
③その状態のまま鼻呼吸で深呼吸をしてみましょう
筋トレを行う事で舌の筋肉をつけ、舌を正常のポジションに持っていくことを習慣づけます。特に舌のポジションは最初意識をしないとどうしても落ちてきてしまうと思います。最初は1日何回かでいいので、意識的に行ってみてください。
表情筋の原因
表情筋が原因になるのは2パターンです。
表情筋をあまり使わない
表情筋を硬く使ってしまう
表情筋をあまり使わない
表情を動かすことが苦手で滑舌にお悩みをもっている方はこのタイプが当てはまるかもしれません。調音において表情筋は重要です。適度に表情筋を動かさないと、調音が上手くいかず、言葉が明瞭になりにくくなってします。
また、普段からあまり表情筋を使っていない場合、表情筋自体が弱くなってしまっている可能性があります。その場合は、表情筋の筋トレから入る必要があります。
表情筋を硬く使ってしまう
逆に、表情筋を動かそうとしすぎてしまい、固くなってしまっている状態です。調音において、表情筋を使いすぎてしまったり、過剰な力みを入れてしまうと、言葉がきれいに作れません。
実は、この表情筋を硬く使ってしまっている方は比較的多く、しかも真面目に勉強をされている方がこの状態に陥ってしまうことがあります。と、いうのも、滑舌の練習を調べると、「口の形を正しくしよう」「口をしっかり大きく開こう」というような練習方法が多く出てきます。表情筋をあまり使わないことが原因の方においては有効な部分もあるかもしれませんが、そうでない方、特にすでに表情を硬く使ってしまっていることが原因で滑舌が悪くなってしまっている方にその方法を実践してしまったら……。すでに硬く使ってしまっている表情筋を、「もっと頑張らなきゃ」とさらに大きく使ってしまいます。こうなってしまうとクセにもなってしまい、改善が難しくなっていきます。
トレーニング方法
表情筋をあまり使わない方
①表情を思いっきり動かしながら「う」「い」と順番に発音します
②「う」の時は顔の真ん中に目、口などのすべてのパーツが真ん中に集まるくらいギュ~~っと顔をすぼめます
③「い」の時は思いっきり笑顔になるように顔を広げてください
④「う」「い」を10回ずつ行いましょう
基本的に「う」・「い」と同じです。
①「わ」の時は顔を思いっきり広げます。オーバーリアクションで驚いたような顔です
②「お」の時は顔のパーツが真ん中にギュ~~っと集まるようなイメージです。
③これも10回ずつ行いましょう
上記の方法で表情筋を使う練習、筋トレを行っていきます。
表情筋を硬く使ってしまう場合
表情筋を硬く使ってしまう場合は、上記表情筋を使わない場合とは逆に、「口や表情をそこまで動かさなくても言葉は話せる」という事を知ってしまう事です。
そのためには「録音トレーニング」が効果的です。
用意するもの:スマホやボイスレコーダーなど録音できるもの。
①音声2回録音します。録音する文章は簡単なもので良い(昔話の冒頭など。昔々あるところに~~いました、等)
②1回目:いつもと同じようにしっかりと読んでみましょう
③2回目:口をそこまで動かさずなんとなく話す、くらいの気持ちで話してみましょう
④2つの録音した音声を聴き比べてみましょう
どのように違うでしょうか? 多くの方は口をそこまで動かさなくても滑舌が悪くならなかったのではないでしょうか? もしかするとハッキリ読んだほうは滑らかさがなくなりカクカクしたような音声になってしまっているかもしれません。
このように違いをご自身の耳で聞いていただき、「口を大きく動かさなくても滑舌は悪くならない」という事を実感することが大切です。
息(ブレス)
滑舌なのに息ってどういうこと? と思われるかもしれませんが、調音には息を当てる場所というものがあります。日本語の50音の中でも、その言葉によっては息を当てる場所が違うのです。
一例を挙げますと、「さ」と「ね」では息を当てる場所が異なります。
「さ」は上前歯後ろの歯茎の付け根あたりにあてるととても言いやすくなります。
「ね」は口蓋垂(のどちんこ)のあたりにあてると言いやすくなります。
この二つを逆にしてみると、とても言いにくくなり、また声のこもりの原因の一つにもなります。このように、50音全てに息をあてる場所というものがあります。この場所が無意識でずれている場合、その場所を正しい場所に変えてあげるだけですぐに滑舌が明瞭になるという場合もあります。
人によって原因が全く違う
声のお悩みの原因は、基本的に全て人によって異なります。滑舌においても人によって原因が全く違うのです。
そのため、残念ながらよく見る複数人が並んで「あ、え、い、う、え、お、あ、お」というようなトレーニングをしても、効果は実感しにくいでしょう。人によって滑舌が悪い原因は異なります。その人の状態を改善するメニューを行わなければ、当然改善できません。さらにそれだけでなく、状況によっては悪化させてしまう場合すらあります。
滑舌のトレーニングを行う場合は、まず最初に「なぜ滑舌が悪いのか」という原因を知る必要があります。
その上で、あなただけのトレーニングメニューを考えていく必要ががあるのです。
詳細が気になる、滑舌が悪い原因が知りたいという方はお気軽にお問い合わせ下さい。